2018年3月17日土曜日

木島櫻谷 近代動物画の冒険 (泉屋博古館分館)

正直、木島櫻谷(このしまおうこく)は知りませんでしたが、天才的な画業だと感心しました。

今回は動物画を集めたものですが、その構図、質感は驚嘆です。同時に公開されていた、膨大な写生のたまものだと思われます。動きのある動物を、写真ではなく動物園の実物で写生したようですので、その写実力は感心します。鍛錬には「量」が重要なんですね。

日本画材を使うので日本画というジャンルですが、明治の画家らしく西洋画から学び、取り入れようという姿勢が、彼の幅を拡げ、実力を上げていると思います。

今回の目玉は何と言っても「寒月」です。
櫻谷の代表作といわれているだけあって、ひとつ群を抜いているように思います。
構図が素晴らしいですし、夜なのに明るく深い雪と空、林立する竹のリズム。竹は黒だけではなく、群青で描かれているのが、深みを生み出しているのでしょうね。

もう一つ「竹林老狸」という晩年の作もいい絵です。画面のほとんどが黒い竹林で、下に狸、竹の間からわずかに見える空に大きな月。構図が巧みです。

2018年1月8日月曜日

ボストン美術館の至宝展 (神戸市立博物館)

ボストン美術館は、モース、フェノロサ、ビゲローら、著名日本美術コレクターのコレクションを所蔵していることで有名ですが、コレクションはそれだけにとどまりません。
今回の展覧会では、「古代エジプト」「中国」「日本」「フランス絵画=印象派」「アメリカ絵画」「版画・写真」「現代美術」の7パートで展開しています。

印象深かったのは、古代エジプト、浮世絵、印象派でしょうか。
古代エジプトの、名もなき職人が彫った彫像や調度品は、大した道具がなかった時代に、優れた仕事をしています。
酒井抱一と喜多川歌麿の肉筆美人画もすばらしい出来です。構図、彩色、情感とも出色の出来ではないでしょうか。
フランス絵画はどれもすばらしいです。コロー、シスレー、ブダン、モネ、ゴッホ、セザンヌ...
お決まりモネの睡蓮ですが、この作品は画面にない空と木が水面に映り込む表現に脱帽です。「窪地のひなげし」も初めてみましたが、これもすばらしい風景画です。
意外と、アメリカにも、ホーマーやエイキンズといった、知らないけどすごい画家もいることが分かりました。

九龍図巻という中国の文人陳容が描いた絵図があります。龍は風を巻き起こして天に昇る。なかなか含蓄のある絵でした。