2022年8月7日日曜日

ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展 (大阪市立美術館)

フェルメール1枚で大展覧会ができるんですから、日本におけるフェルメールの人気ってすごいなと思います。
しかもこの1枚は、過去にはレンブラント作とか他の人作とかと言われていた初期の作品ですし。

目玉は何といっても、その修復です。
作中画としてキューピッドの絵が復旧された、ということで、これがフェルメールのオリジナル、ということでしょうが、ちょっと焦点が2つできたみたいで、構図としてどうなんだろう、とは思います。
後世の人が塗りつぶした気持ちも分からないではありません。
それより、鮮やかな色が蘇った方が僕には意義があることに思えます。
特にカーテンの赤と窓の青(ラピスラズリでしょうか)が鮮やかに蘇ったのは素晴らしいことだと思います。
根気のいる作業でしょうね。

フェルメール1枚を目玉にしているとは言え、その他のオランダ絵画も見過ごせません。
オランダ絵画といえば写実性が特徴ですが、静物画にして肖像画にしても風景画にしても、その技術に驚きます。
日本で言えば江戸時代初期、そんな時代に!
レモンのみずみずしさ、ガラスの反射、ビロードやシルクの生地感、血管まで意識した手の肌.....
神業ですね。

Girl Reading a Letter at an Open Window / Johannes Vermeer
Woman Behind a Green Curtain / Bartholomeus van der Helst
Interior of the Oude Kerk in Amsterdam / Emanuel de Witte
The Gallant Gentleman / Jacob OchterveltPortrait of a Woman / Michiel van Mierevelt


2022年7月3日日曜日

没後50年 鏑木清方展 (京都国立近代美術館 2022/5/27-7/10)

驚愕、驚嘆しました。
これがプロの技か!美術品というより工芸品。まあ細かい、繊細、手抜き一切なし。
これだけディテールにこだわって、全体のバランスが崩れていないのもすばらしい。
髪の毛一本一本、かんざし、和服の文様、帯、指先、すだれ、店先...
こりゃ実物じゃないと伝わり切りません。

「築地明石町」の主人公の瞼の線を、拡大して初めて気がつきました。よりクール・ビューティが映えます。

「ためさるゝ日」の髪飾りの鎖の輪を細かく描いているのを見たとき(遠目にはひもに見えました)、「浜町河岸」のかんざしのリアルさに気づいたとき、「露の干ぬ間」の完璧な竹の描写を観たとき。
細かいところまで見ることができたのは、新しく購入した単眼鏡のおかげです。

西洋美術の細かいところを見ても驚いたりしませんでしたが、今回の鏑木先生の絵は、それこそ「神は細部に宿る」です。本当に驚きました。

こんなに精魂を込めた絵を何枚も書けるのってものすごいことだなと改めて、画家の胆力を感じました。僕なら途中で嫌になりそう。

しかも、それほど登場しない花や竹などの植物も完璧に描き分けていて、これって何なんでしょう、才能ですか?ものすごい鍛錬ですか?

神業です。


https://kiyokata2022.jp/

2022年6月1日水曜日

モディリアーニ ー愛と創作に捧げた35年ー (大阪中之島美術館開館記念特別展)

中之島美術館では、"Reclining Nude With Loose Hair" を所蔵していることから、開館記念として Modigliani の特別展を企画したようです。
目玉の一つですからね。

引き伸ばされた頭部、極端に長い首、時にパステル・カラーに塗りつぶされた目、独特の赤茶色の使い方、彼の絵は一眼見て彼の絵と分かる本当のオリジネータだと思います。

常識なのかもしれませんが、これらが彫刻、特にアフリカのプリミティブな仮面や彫刻から着想を得ていることがよく分かりました。
基本的に Modigliani は彫刻家をめざしていたそうで、その夢破れて絵画に回帰したようです。
絵画に回帰したのが1914年で亡くなるのが1920年なので、ほんの数年に大量の傑作を生み出したことになります。
やっぱり、芸は量ですね。

それと、アフリカの民族工芸の影響も大きそうでした。
同時代の Picasso もアフリカに興味を持っていたように、時代の波に敏感だったのかもしれません。
彫刻への傾倒とアフリカ嗜好をうまく昇華させて独特の芸術に結実させていくところが、やはり天才なんでしょうね。

Amedeo Modigliani はエコール・ド・パリの一人のように言われますが、この展覧会では彼と同時代に生きた、パリに集まってきた若き芸術家の絵もたくさん取り上げています。
Pablo Picasso, Marie Laurencin, Andre Derain, Moïse Kisling.....
中でも一番良かったのは、Marc Chagall の絵でした。Modigliani とは同じユダヤ系で外国から来たという点で親交があったようです。
いわゆる Chagall 的な色彩が完成する前ですが、浮遊する人などはすでにオリジナリティの萌芽が見られます。
Modigliani も大きく感化されたことでしょう。

Jeanne Hébuterne の悲恋のストーリーも紹介されていて、それを知っての Jeanne Hébuterne の肖像を見ると感慨深いものがあります。 

ポール・アレクサンドル博士の肖像
髪をほどいた横たわる裸婦


2022年2月18日金曜日

⼤阪中之島美術館 開館記念 Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―

やっと開館した中之島美術館、開館記念でコレクションを一挙公開ですが、なんせ展示物が多い。

洋画、日本画、写真、オブジェ、インテリア、現代美術、ポスター、大阪にゆかりのある絵・画家....

2時間じっくり観たあとで気づいたのは、まだ半分、結局3時間半かかりました。

素晴らしいコレクションだと思います。

最初のパートにあった佐伯祐三のコレクションが印象深いです。オリジナルな作風を確立してますよねえ。絵を観れば誰が描いたか分かる。

また、クリムト、ロートレック、ジャコメッティ、マグリット、ダリ、エルンスト、ローランサン、関雪、松園ら、ビッグネームはやっぱ画力がすごくて、センスが桁違いやな、と思いしらされました。

佐伯祐三 "郵便配達夫"

石崎光瑤 "白孔雀佐"

モディリアーニ "髪をほどいた横たわる裸婦"

草間彌生 "アキュミュレーション"

フランク・ステラ "ゲッティ廟(第1ヴァージョン)"

リヒター "ドゥインガーの肖像"

クリムト "第1回ウィーン分離派展"

ボッチョーニ "街路の力""

図柄はありませんが、次も印象深いものでした。

  • 佐伯祐三 パリ15区街
  • 橋本関雪 霜猿
  • 伊谷賢蔵 万年山


https://nakka-art.jp/untold-99-stories/index.html

2021年12月16日木曜日

メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 (大阪市立美術館)

美術館展の改修で、けっこうなアートがやってきたらしい。嬉しいことやね。
30年以上前になりますが、ニュー・ヨークに行ったときに訪れました。やっぱ1日じゃ足りないくらいでしたね。
イギリスやフランスの美術館と違って、王侯が力ずくで奪ってきたものじゃなくて、今を時めくアメリカの実業家が金にものを言わせて集めてきたものですよね。いいものが集まるでしょう。

ニュー・ヨークには現代美術館(MOMA)がありますので、必然的にオーセンティックなものが中心になります。

この展覧会では、西洋絵画を3つのテーマに分けて展示されています。

  1. 信仰とルネサンス (~16世紀)
  2. 絶対主義と啓蒙主義の時代 (17~18世紀)
  3. 革命と人々のための芸術 (19世紀)

1.はアンジェリコ、ラファエロ、ホルバイン、クラーナハ、エル・グレコ、テッツィアーノらの30点。ヨーロッパの人って、いかにキリスト教に支配されていたのか、というのをアート作品を見ると分かります。暗喩的表現なんて、僕には分かりません。

2.はルーベンス、ベラスケス、ムリーリョ、カラヴァッジョ、ラ・トゥール、プッサン、ブーエ、ロラン、フェルメール、レンブラント、ヤン・ステーン、ヴァトー、ブーシェ、フラナゴールら30点。
やはりここではカラヴァッジョでしょう。「音楽家たち」はその後のカラヴァッジョの活躍を示唆しています。
それとこの時代はオランダの写実主義絵画が圧巻ですね。

3.はターナー、コロー、マネ、ルノワール、モネ、ドガ、ゴーガン、ゴッホ、セザンヌ、シスレーら、一気に印象派、ポスト印象派の時代になります。だいぶ自由になってきましたね。

僕がすごいな、と思ったのは次の4点。

グイド・カニャッチ「クレオパトラの死」Guido Cagnacci "The Death of Cleopatra"


シモン・ヴーエ「ギターを弾く女性」
Simon Vouet "Woman Playing a Guitar"


エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン「ラ・シャトル伯爵夫人」
Elisabeth Louise Vigée Le Brun "Comtesse de la Châtre"



アルフレッド・シスレー「ヴィルヌーヴ=ラ=ガレンヌの橋」
Alfred Sisley "The Bridge at Villeneuve-la-Garenne"


前2作はカラヴァッジョの影響が大です。ドラマチックな陰影がいいです。

2020年2月26日水曜日

ゴッホ展 (兵庫県立美術館)

海外では「ヴァン・ゴー」というゴッホですが、ゴッホがゴッホたりえる絵を描いたのは、最晩年のほんの数年のことでした。

この展覧会は2部構成になっていて、プロの画家を目指した時に影響を受けた「ハーグ派」との出会いと、「印象派」との出会いがそれぞれフィーチャされています。

パリに移ってからの印象派との出会いが、大きく彼の絵を変えましたが、その前の時代のゴッホたりえない絵も今回の展覧会では多く集められています。見てもゴッホとは分からない絵が、こんなにあったのかというのは驚きです。ミレーへの憧れが前面に出ていますが、絵を描くことの喜びというより、たくさん練習することが大切、という感じを受けます。

後年の絵は圧巻です。生前に絵が売れなかったにも関わらず、どうやってこういうオリジナルな境地を極めるモチベーションを保つことができるのか?人からの評価ではなく、自分のモノサシを持った、立派なアーティストなんですね。
1888 麦畑

1889 糸杉

2020年2月2日日曜日

カラヴァッジョ展 (あべのハルカス美術館)

日本で言えば、関ヶ原の合戦の頃。絵の技術はこれほどレベルが高いのか、と驚きました。

カラヴァッジョ(Michelangelo Merisi da Caravaggio)の作風は、当時斬新で、大きなセンセーションを生み、カラヴァッジェスキと言われる多くの追随者を生みました。
カラヴァッジョで一番有名なのは、ローマのサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会に描いた「聖マタイの召命」でしょう。収税所に突然現れたイエスがそこで働いていたマタイを指名する図ですが、その劇的な明暗のコントラストと重点化こそがカラバッジョ様式、バロックと言われるものです。

今回の美術展で一番心打たれた絵は、「法悦のマグダラのマリア」でした。イエスから救済を受け、その悦びからうっすら涙しながら法悦に浸っているマグダラのマリア。解脱、涅槃。カラヴァッジョの他の作品とは一線を画しているように思います。

一方で「リュート弾き」は写実の精緻さに驚きました。花瓶に映る窓、楽譜。音符まで正確に写しとっている模様です。
変わり者で、刀を持ち歩き、時に人を殺め、恩赦のために絵を描いた、そんな彼でも支援者がいたようですから、才能というのは偏っていて、それを認める寛容さが人間社会なんですね。

ちなみに、あべのハルカス美術館に上がるエレベーターは、展望台に行くエレベーターと同じで、中国人がいっぱい。新型コロナウィルスが流行っている中、マスク持ってないことを後悔しました。

http://m-caravaggio.jp